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海のルール



漁業法と遊漁(釣り・磯遊び)


海の生物調査隊の約束  海のルール 

海辺でよく見かける看板に思う

海辺に行くとよく見かける右の看板。(写真をクリックすると大きく表示されます)
私たちは、子供たちに絵本や写真だけではなく、 実際に手にして生物の形状、生態を感じてもらうことで、 海の生物の多様性を理解し、海の環境や生物に関心を持ってほしいと願う者ですが、 この看板を見た人たちは、どう思うのでしょうか。

採ってはいけない、持ってもいけないと言う表現は、子を持つ親たちに、 泳ぐだけであればプールのほうが良い、触れない動植物であれば水族館のほうが良いといった印象を与え、 結果的に感性豊かな子供たちを海から遠ざけ、将来の海の担い手を減らす原因にもなっているように感じます。

この看板の目的は、漁業法や漁業調整規則に定める免許を得ずして、 第1種共同漁業権である定着性動植物の捕獲を禁じる警告でしょうが、一方的な漁業権や罰則の掲示は、 海のルール(法)を知らない一般の人に与える印象は、測り難いものになるでしょう。

このような威圧的な看板は望みませんが、知ってますか海のルールを、と問いかけるより、 海のルールを公報することが大切で、ここに一般市民ができる海辺での遊びについて、 子供たちにもわかるように、 海のルールを紹介していきますので、皆さんに理解いただければ幸いです。

海の警告看板


2020年このように変わっていました


1、海の利用者とルールの必要性

海はいろいろな人たちに利用されます。防衛や保安、海上交通や輸送、漁業従事者、 レジャー利用者などが挙げられますが、私たちにとって身近なレジャーは、 海水浴、釣り、スノーケリングやダイビング、 サーフボード、ヨット、水上バイク、プレジャーボートなどがあり、 多種にわたり多くの人が利用します。
そのような遊びであっても、一つの海を多くの人が利用するにはルールが必要となります。
このページでは、海に住む動植物を採る(採捕)と言う行為について、 法律では一般の人が行う動植物の採捕を『遊漁』として記載されますが、 関係する法律を基に『遊漁』に関するルールを紹介していきます。

沿岸の海で魚介類(水産動植物)を採って生活する人たちには、 漁業に従事する漁師さんが居ます。 私たち市民が気軽に行う、海の動植物を採る(採捕)『遊漁』行為で、漁業関係者との間で良くトラブルが発生しますが、 両者は、一方だけの事情を押し付けるのではなく、 お互いの権利、利用目的やルールを理解し、海を共用しなければなりません。



2、漁業に関する法律とはどんなもの?

漁業に関係するルール(法や規則)には、主にA~Dに挙げるものがあります。


(A)漁業法
漁業に関する法律で、漁業権を免許(福岡県知事が免許)するなど、水産庁所管の法律です。

(B)水産資源保護法と規則
水産資源を保護する法律で、農林水産大臣または都道府県知事が定めます。

(C)筑前海区漁業調整委員会指示事項
日本の海は、農林水産大臣により66の海区に分けられ、海区毎に置かれた漁業調整委員会により漁業を調整しています。 私たちが住む福津市が接する海は、 筑前海区と呼ばれ、その範囲は北九州から佐賀県境の沖合いにおよぶものになります。 海区漁業調整委員会は、漁業に関する制限など指示を出すことが出来ます。

(D)福岡県漁業調整規則
(A)~(C)に基づき、福岡県知事が定める自治立法の規則(法)で、福岡県の実情に合わせ定められています。
私たち福岡県民は、この規則を守らなければなりません。


3、漁師さんたちが営む漁業と『遊漁』とは

漁業とは、『水生動植物を採捕又は養殖する事業をいう。(漁業法第二条)』とされており、 漁業法で定める漁業は、大きく分類すると次の(1)~(3)に分類されます。 (事業とは:営利を目的とした仕事)


(1)漁業権漁業
この漁業権は、都道府県知事が漁業協同組合または協同組合連合会や法人に免許し、 下記の3つの漁業ア~ウを営むことが出来ます。


ア、共同漁業(漁業協同組合員に免許)
一定地区の漁民が特定の水域を共同に利用して営む漁業で、 協同組合が制定する漁業権行使規則に基づき、 組合員の漁業者が行う漁業のことです。

イ、区画漁業(漁業協同組合員または法人に免許)
主に、一定水面区域で営む養殖業のことで、漁業協同組合や法人でも営むことが出来ます。

ウ、定置漁業(漁業協同組合員または法人に免許)
水深27m以上の海域に設置される大型の定置網漁業(小型の定置網はア、 共同漁業に含まれる)で、地元漁民を含んだ法人でも設置可能です。


(2)許可漁業
この漁業は、農林水産大臣または都道府県知事が免許する漁業で、 (1)漁業権漁業で定められた指定沿岸水域を除く、沖合、遠洋海域で行う漁業です。


(3)自由漁業
許可および免許の対象となる水生動植物の採捕や漁法以外で行う漁業のことです。



ここまでが漁業法で定める漁業です。私たち一般市民は、この漁業はできません。
でもこのほかに、私たち一般市民でもできる遊漁と言うものがあります。


(※)遊漁
これは免許されるものではなく、一般の市民が行える水生動植物の採捕に関する漁で、 営利を目的としない、主に釣り、潮干狩りなどのレジャーを目的としたものです。 でも、レジャーを目的とした『遊漁』であっても『漁業法』、 『水産資源保護法』、海区漁業調整委員会が定める『指示事項』や都道府県が定める『漁業調整規則』 を守らなければなりません。
これらルールに違反すると罰せられますので、特に注意が必要です。


如何でしょうか、これまで漁業で行える業の分類や『遊漁』 ついて記載しましたが、 私たち市民が行う『遊漁』に際し、 特に関係する法は、前記の内、(1)漁業権漁業の『ア)共同漁業』と言うことになります。

では、共同漁業とはどんなものか、もう少し詳しく紹介します。



4、共同漁業とは

漁業権漁業の内、共同漁業が出来る特定の水域、魚種、漁法は福岡県知事が定め、 漁業協同組合に漁業権を免許します。
漁業協同組合に免許された漁業権内容は、福岡県漁業管理課で閲覧できますが、下記のようなものがあります。


(1)第1種共同漁業権
共同漁業で免許された特定の水面(地先沿岸水面のほぼ全域)を排他的に使用し、 定着性の高い水生動植物(藻類、貝類、ウニ、ナマコ、タコ、イセエビなど)を採捕する漁業。 水生動植物に魚類が入っていないことを覚えておいて下さい。

(2)第2種共同漁業権
小規模定置網や刺し網など、漁具を移動しないように敷設して魚類を採捕する漁業。

(3)第3種共同漁業権
地引網、地こぎ網などで魚類を採捕する漁業。

(4)第4種共同漁業権
瀬戸内や三重県などで行われる特殊漁法を利用した漁業。

(5)第5種共同漁業権
内水域(河川や湖沼)で行う漁業。



この漁業権によると、(2)第2種~(4)第4種の漁業権は、 私たち市民には馴染みの無い漁業権ですね。
従って、私たち市民が行う『遊漁』において、 特に注意して守らなければならない漁業権は、 共同漁業の内、第1種共同漁業権と第5種共同漁業権ということになります。

次に、採ってはいけない大きさなどを定める『水産資源保護法』や福岡県が定める『漁業調整規則』、を紹介します。



5、福岡県漁業調整規則及び水産資源保護法のルール

このルール(規則・法)の大半は、漁業を営む者に向けたルールですが、 この漁業調整規則の中には『遊漁』に向けたルールも記載されています。
ここでは、海水面域に限定(内水面を除く)し、 諸法の中から『遊漁』を行う際、 守らなければならない事項を抜粋して、行為別に記載していきますが、 注)このルールは、私たち福津市民が接する筑前海水域に適用されるもので、 他水域ではルールが異なる場合がありますので注意を。 興味のある方は、各法にアクセスし詳細をお読みください。



(1)魚釣り・魚採り 

第1種共同漁業権には魚を対象にしておらず魚釣りは可能です。 でも下記のルールがあります。


 A, 漁具・道具・漁法について 

使用可能なもの
・手釣り、竿釣りで行う魚釣りに限る。
 (魚釣りとは、魚が自ら針についた餌を求め、釣る漁法と定義されています。)
 (ルアーやイカ用餌木の使用は、魚が餌と思い、自ら食ってくるので魚釣りに該当します。)
・やすの使用
 (やすとは:魚などを突き刺す先端部と柄が固着したもので、柄を持って使用するもの。)
・タモの使用
・スノーケリングでやすやタモを使用した魚採り。(魚に限ります)
 (水中銃の使用は禁止。やすにゴムを装備したものも禁止している漁協もあります。)


禁止されているもの
・ひっかけ針を使用した魚採り。(空釣り漁法)
 (空釣りやひっかけ針漁法は、福岡県知事の許可を要する漁法です。)
 (空釣りとは、エサを付けないで、魚を単に引っかける漁法で、魚釣りに該当しません。)
・定置網周辺での魚釣り。
・生簀の中での釣り。(刑法:窃盗罪が適用されますので特に注意を。)
・トローリング。
・船舶を利用した投げ網での捕獲。
・漁業操業活動妨害行為
 (漁船航行妨害、漁具に損傷を与える行為の禁止などがあります。)
・潜水器具(簡易潜水器具含む)を使用した魚の捕獲。
・かごや筒状漁具を使用した魚の捕獲。
・水中銃を使用した魚の捕獲。
・水中に電流を通じて魚を採る漁法。
・照明を使用する鉾突き漁法。(やすを使用した場合も含む。)
・干潟において照明を利用した漁法。
・爆発物を用いて捕獲する漁法。(資源保護法)
・有毒物を用いて捕獲する漁法。(資源保護法)


 B, 特定魚種の大きさについて 

禁止されているもの
・うなぎ:21cm以下の捕獲
・ぶり(もじゃこ):15cm以下の捕獲


(2)定着性水産動植物の採捕 

魚以外で、 共同漁業で定められた水面における第1種共同漁業権とされた定着性の高い水産動植物の採捕は、 漁業権の侵害となり、罰せられことがありますので注意しましょう。
漁業権で免許された水産動植物には、下記のようなものがあります。

( 貝類 :アワビ、トコブシ、サザエ、岩ガキ、アサリなど)
(水産動物:イセエビ、シャコ、タコ、ナマコ、ウニ、カメノテ、イソギンチャク、ヒトデなど)
( 藻類 :ワカメ、コンブ、ヒジキ、テングサ、モズクなど)


 A, 漁具・道具・漁法について 

使用可能なもの
・徒手採捕での漁法は可能
(徒手採捕とは、所謂手づかみで採ること、とされていますが、以下の漁具の使用は可能です。)
・やす、タモ、手網
・は具(熊手、じょれんを含む)


禁止されているもの
・前記、使用可能なもの以外。
(※)潜水器具(簡易潜水器具含む)を使用した水産動植物の採捕は禁止、特に注意を!


 B, 特定動植物の大きさについて 

禁止されているもの
以下は、漁業でも採捕を禁止されています。
・アサリ:殻長3cm以下。
・ハマグリ:殻長4cm以下。
・赤貝:殻長7cm以下。
・真ダコ:100g以下。
・ガザミ:13cm未満。
・アワビ:10cm以下。


 C, 採捕の禁止期間について 

特定動物の採捕禁止期間
以下の期間は、漁業でも採捕を禁止されています。
・ナマコ:4月1日~9月30日の間。
・ハマグリ:6月1日~8月31日の間。
・アワビ:11月1日~12月20日の間。


6、海でよく見かける禁止された漁法 

福津市や宗像市沿岸の港湾でよく見かける下記の漁法は、禁止されていますので止めましょう。
(注:表現が曖昧な部分を追記しました。)


・イイダコ引っかけ針を使用したナマコ採り。(規則:空釣り禁止、第1種漁業権)
(ナマコは第1種漁業権で捕獲禁止されています。)
・引っかけ針を使用したソデイカ採り。(規則:空釣り禁止)
・引っかけ針を使用したカワハギ、カマス採り。(規則:空釣り禁止)
・3cm以下のアサリや4cm以下のハマグリ採り。(規則:大きさの制限,)
・アサリ、ハマグリなど貝類の採取。(規則:第1種漁業権)
・カマを棒先に固定したワカメ採り。(規則:漁具の制限、第1種漁業権)
(浜に打ち上げられているワカメ、テングサは、定着性ではないので採取可能です。)
・夜間照明を使用した干潟での水産動物の捕獲。(規則:漁法の制限)
・汽水域でのモクズガニ(毛ガニ)採り。(規則:内水面漁業の免許、第5種漁業権)


7、守ろう!遊漁のマナー 

子供たちと楽しく遊漁(魚釣りや磯遊び)が出来るよう、まず私たちがマナーを守りましょう。


(1)遊んだ後の清掃 

・空き缶、ビニール袋など、ゴミは持ち帰り処分しましょう。
・釣道具、糸、針、余った撒き餌など、不要なものは海に捨てず、持ち帰り処分しましょう。
・イカ墨や撒き餌の跡は、水を流し清掃しましょう。


(2)魚のリリース 

・小さな魚や不要な魚は、置き去りせず、海にリリースしましょう。
・釣り過ぎ、採り過ぎは、節度を持って臨みましょう。


(3)駐車は決められた場所に 

・車両は、漁業関係者の操業に支障のない場所や決められた場所に駐車しましょう。


(4)決められた場所で遊ぶ 

・進入禁止の柵や漁業関係者専用の場所に注意し、許された場所で遊びましょう。



8、漁業協同組合への免許内容 

福岡県が各漁業協同組合へ免許した内容は、後日別のページでお届けしたいと思います。